外科と代謝・栄養
Online ISSN : 2187-5154
Print ISSN : 0389-5564
ISSN-L : 0389-5564
ESSENSE ミニシンポジウム
胃癌周術期における栄養サポートの重要性~胃切除後の 体重減少を軽減することで生存率と患者満足度向上を目指す~
今村 博司川瀬 朋乃柳本 喜智小田切 数基清水 潤三池永 雅一鈴木 陽三山下 雅史冨田 尚裕西川 和宏木村 豊
著者情報
ジャーナル フリー

2023 年 57 巻 3 号 p. 67-

詳細
抄録

胃癌根治術後の体重減少は、術後合併症の発生のリスク因子になり、生存率を低下させる可能性が示されている。また、 II/III 期胃癌の標準治療は胃切除による根治手術+術後補助化学療法であるが、胃癌術後の体重減少は、術後補助療法の 治療継続性を阻害し、生存率を低下させる可能性が示されている。そこで、胃癌根治術後に栄養サポートを行うことで、 術後の体重減少を軽減することはできないか、また、術後補助化学療法の治療継続性を有意に向上させることができな いかについて、2 つの多施設共同の前向き臨床試験によって検討した。KSES-001 試験:【対象と方法】胃癌根治術の患者 100 例を通常栄養管理の対照群(47 例)と通常栄養管理に術後6~8 週間に300kcal/day の成分栄養剤を付加するED 群(53 例)にランダム割付した。主要評価項目は、術後6~8 週後の体重減少割合(%)とした。【結果】対照群、ED 群の体重減少割合は、それぞれ、6.60%、4.86% で、ED 群の方が有意に体重減少が軽減されていた(P=0.047)。OGSG- 1108 試験:【対象と方法】1 年間のS-1 による術後補助化学療法を予定されている胃癌術後患者に対して、少なくとも前 半の6 か月間は、300kcal/day の成分栄養剤を併用することで、S-1 の治療継続性が向上しないかについて、主要評価項 目をS-1 の治療完遂割合(S-1 が1 年間治療継続でき、かつ、RP 値が70% 以上であった患者の割合)として検討した。 1 年間のS-1 による術後補助化学療法の有効性を検証したACTS-GC 試験のS-1 投与群の治療完遂割合の56.6% を閾値 とした。【結果】S-1 の治療完遂割合は、69.0%(56.9%‐79.5% 95%CI)であり、成分栄養剤を併用することで、S-1 の治療継続性が向上する可能性が示唆された。【結語】胃癌周術期の栄養サポートによって、胃切除後の体重減少を軽減 し、術後補助化学療法の治療継続性が向上する可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2023 日本外科代謝栄養学会
前の記事 次の記事
feedback
Top