抄録
農地からの硝酸塩(NO3-)の溶脱を水移動と関係づけて説明するため,黒ボク土畑圃場を対象に,土壌の体積含水率と圧カポテンシャルを経時観測すると共に,土壌中NO3-含量と液相中NO3-濃度を定期的に測定した。深さ 1 mを横切る水の流れは,鉛直一次元のDarcy式で近似できるマトリックス流が主体であり,選択流は,年に数回程度,大雨時に生じた。深さlm付近では,土壌中NO3-含量及び液相中NO3-濃度の水平方向のバラつきは小さく,NO3-の半分近くは吸着態だった。これに対して,NO3-は,見かけ上,水移動に対して遅延することなく下方移動していた。これは,選択流がNO3-の移流を倍近く速めたことを示唆する。以上の結果は,この黒ボク土畑では,圃場条件下におけるNO3-の輸送・溶脱現象を鉛直一次元の解析を基準として説明•予測できることを示す。