土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
異なる水分条件下のパイライト含有土壌における Thiobacillus ferrooxidans の個体群動態
上野 薫足立 忠司成岡 市
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2006 年 102 巻 p. 71-78

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抄録
パイライト含有土壌の初期的酸化において触媒の働きを担う鉄酸化細菌Thiobacillus ferrooxidansの微生息域と土壌水分との関係の把握を目的として,土壌水分条件を3段階に設定した潜在的酸性硫酸塩土壌の静置培養を行い,より強く 土壌に吸着された T. ferrooxidans (AFT)と,より弱く吸着された T. ferrooxidans (FFT)を遠心法により分別し計数した。これら細菌数の経時的変化から,水分条件の異なる土壌における当該細菌の生息•増殖部位について推定した。その結果,どの水分条件下でも培養初期にはAFTが多く存在すること,増殖率は, 一35 kPaで吸着状態に関係なく最も高いこと,生残率は 一3.5 kPa,とくにAFTで高いこと, 一3000 kPaではFFTが検出されず,培養初期にわずかに生息していたAFTも長くは生存できないことが明らかとなった。これより,上記細菌の個体群動態は土壌水分条件により異なることが示されたが,微生息域の特定には直接的手法を用いた別途検証が必要と考えられた。
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© 2006 土壌物理学会
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