抄録
泥炭土壌のガス拡散係数Dsは,温室効果ガスの潜在的な発生源である泥炭地湿原における土壌ガスの輸送機構を明らかにする上で重要である。本稿では,不撹乱泥炭土壌のAを様々な気相率aの下で測定し,鉱物土壌のとの比較や既存のDs予測モデルの適用を通じて,泥炭土壌のが持つ特性の把握を試みた例を紹介した。泥炭土壌試料は北海道の美唄湿原の不飽和土層から,鉱物土壌は北大農場の作土層から,それぞれ採取した。泥炭土壌のDsが鉱物土壌のDsよりも低い値を示したことや,鉱物土壌に対して信頼度が高いとされたDs予測モデルが泥炭土壌のDsを過大評価したことから,泥炭土壌のDsは他土壌に比べて低い値を持つと考えられた。また,分解の進行した黒泥層のDsが高位泥炭土層のDsよりも高い値を示したことから,泥炭土壌の分解によって泥炭土壌の通気性が上昇し,これがさらに泥炭土壌の分解を誘発する,という正帰還的な機構の存在が仮定された。