土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
泥炭地•湿原における温室効果ガス
永田 修
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2006 年 104 巻 p. 85-95

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抄録

湿地は1平方キロメ ートル当たり約 70 tの炭素を蓄積しており生態系の中において重要な炭素プールである。年間の泥炭堆積厚は 0.15 mmから 1 mm,また,炭素蓄積速度は,年間 1 m2当たり 11 gから 80 gと報告されている。湿地は自然発生源においてメタンの最も大きな放出源で,世界の緯度別にみると 60 %以上が熱帯から,そして, 30 %が北方域からもたらされている。フラックスは 8 月から 9 月にかけて高くなるという季節的な傾向がみられ,さらに,融雪後にも大きな値がみられる。メタン放出については,大気圧の低下により,気泡中のメタンが突発的に噴出されることも示されている。湿原における亜酸化窒素に関する報告は少なく,自然状態で発生は認められないが,排水によって水位が低下した場合には放出される場合がある。ササが侵入した湿原での温室効果ガスの測定から,ササの侵入が地球温暖化を促進することが示され ている。北海道石狩川流域における湿原から農耕地への土地利用変化は地球温暖化を促進する過程であった。

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© 2006 土壌物理学会
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