作物の生育を制限する塩類集積は,乾燥•半乾燥地域をはじめ世界中で問題になっている。土壌の塩類化の目安として,土壌抽出液の電気伝導度(EC)を測定することが多く, これまでに様々な手法が用いられてきた。破壊的な方法として,土壌試料を採取した後,ペースト状の飽和抽出液, あるいは土壌試料と水との比が1 : 1 , 1 : 5 となるような懸濁抽出液を調製し, そのECを測定する方法があり, 一般的な方法である。—方,非破壊的に測定する方法として,シグマプローブと呼ばれる土壌水のECを直接測定する方法がある。本研究の目的は,土性および塩濃度の異なる石灰質土壌を用いて,土壌水抽出液のEC測定とシグマプローブによるEC測定との関連性を検討することである。抽出液のE C測定とシグマプローブによるE C測定の結果は,全体的に高い相関(R2=0.98)を示した。さらに土壌中に多くの塩が存在するとき, ペースト状にして得られた飽和抽出液と 1 : 5 懸濁液のECとの間に直線的な相関が得られ, 20 dS/m以下のECの場合, 最も高い相関が得られた。シグマプローブによる測定値は,土壌水分量や土壌水中の塩類による影響を受けるが,飽和抽出液のEC測定値と最も相関が高かったのは,土壌水分量が低く, 10 dS/m以下のECの場合であった。土壌水中に様々な塩類(例えば, Na+, Ca2+, Mg2+など)が混在する場合や, より多くの塩類が溶解した場合に相関係数(R2)は低くなった。シグマプローブの使用により,土壌水のEC測定のための土壌採取が不要となり,現場において,土壌水抽出後のEC測定方法と遜色のない測定結果が得られるであろう。さらに,シグマプローブによるEC測定は,圃場容水量程度の低い土壌水分量の場合が最適な測定条件と考えられる。しかしながら, 土壌塩類や土壌水分が増加する場合に, さらなる研究が必要である。最後に, あらゆる確立された方法や式を土壌中の塩分量や水分量の推定に適用する前に,土壌特性や測定環境を考慮する必要がある。しかしながら,本研究で求めた方程式がある土壌で適合しているのならば,塩類の測定はシグマプローブによって短時間で行うことが可能であり,標準の方法における値と関連づけることができる。
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