土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
比抵抗探査法を用いた広葉樹林床土壌における樹幹流の影響把握と地下水涵養効果の評価
嶋田 純大角 京子大場 和彦丸山 篤志
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2008 年 108 巻 p. 19-28

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抄録

森林内では林内雨に比べて量的に少ない樹幹流は多くの場合無視され,同じ森林域内でも樹幹周辺は樹冠(キャノピー)投影域外側よりも地表面に達する降水量は少ないため,木の下は相対的に乾燥していて地下水に対する涵養効果は低いものと考えられてきた。本研究では,同一断面側線上の土壌水分量変化を非破壊で繰り返し測定することの出来る比抵抗探査法を利用し,落葉広葉樹のクヌギ林がある台地上の試験林において樹幹流が浅層土壌水分分布に及ぼす影響を評価し,地下水涵養に対する効果の把握を試みた。測定結果に基づき樹幹直下林床領域と樹幹の存在していない林床領域の土壌水分スラックスを比較した結果,樹幹直下林床領域は年間を通して下向きのフラックスが存在しており,相対的に湿潤な環境にあったが,樹幹の存在していない林床領域では相対的に蒸発過多で下向き土壌水分降下は殆ど期待できないことが示された。比抵抗継続測定結果をもとに樹幹流浸透領域を定義して地下水涵養における樹幹流浸透効果を評価した結果,対象領域に占める樹幹の割合は面積的にはわずか1%程度にすぎないが,樹幹を経由した降水が領域全体の涵養量に占める割合は40%にもなり,高い涵養効果があることが示された。

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© 2008 土壌物理学会
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