抄録
泥炭地は潜在的に温室効果ガスの放出源となり得るため,その土壌中の挙動を明らかにすることは重要である.本研究では,これまであまり報告例のない泥炭林土壌中における温室効果ガス(CO2,CH4,N2O)の挙動を,クローズドチャンバー法と土壌ガス拡散係数と濃度勾配に基づく拡散法を用いて約 1 年間調査した.その結果,次の点が明らかになった.CO2 の地表面からの年間放出量は 725 g C m−2 であり,その 90 % が 0 から約 10 cm までに生成されていた.CH4 の年間吸収量は 0.47 g C m−2 であり,地表面から約 10 cm までに大気から移動してきた全てが酸化され消失していた.10 cm 以下でのCH4 の移動はほとんどなかったが,地下水面近傍で何度か大きな上向きフラックスを生じていたことから,地下水面下で発生していることが示唆された.N2O の地表面からの年間放出量は 0.249 g N m−2 であり,土壌のどの深さでも生成,消失が起こっていた.生成,消失が活発なのは地表面から約 22cm であった.CO2,CH4 と異なり N2O は積雪期に生成,消失が活発であった.