2010 年 115 巻 p. 51-60
様々な負圧境界圧力,初期圧力水頭を持つ砂質ロームとシルトを対象にした水平浸潤と鉛直浸潤の数値実験に対して,Green and Ampt(G & A)モデルを適用して検討を行った.水平浸潤では,積算浸潤水量 I と時間の平方根 t 1/2 の傾きから一定値の前線有効圧力 hF が定まる.そこで,負圧浸潤の前線有効圧力 hF について,境界圧力 h0 と初期水分量 θi との関係を求めた.一方,鉛直浸潤の G & A モデルは,圧力勾配が卓越する浸潤初期から重力項の役割が大きくなっていく過程の積算浸潤水量 I や浸潤前線の移動速度 VF の変化を表現できる.しかし,鉛直浸潤の前線有効圧力 hF は,浸潤直後は水平浸潤に近い値を示し,その後,重力成分が相対的に大きくなるにつれて hF は増加する.この前線有効圧力 hF が一定値に定まらない点が G & A モデルの鉛直浸潤に対する適用限界である.