抄録
土壌凍結層が形成されると融雪水の浸透が抑制され,農地の水や肥料成分の移動に影響を与える場合がある.そこで,北海道の十勝地域に観測サイトを設置し,土壌凍結層の発達が融雪期の下層(0.5 m 以深)への浸透量に与える影響を評価した.自然積雪状態の試験区と,積雪期間中に除雪をおこなって土壌凍結を促進させる試験区を設置した.土壌水分量や地温,積雪水量等の観測を 3 年間実施し,最大土壌凍結深が 0.1 ∼ 0.5 m のときの融雪期の 0.5 m 以深への浸透量を水収支法により計算した.計算結果を融雪水量等で補正した値(浸透割合)と,融雪期直前の土壌凍結深との間に,明確な負の相関関係がみられた.一方,浸透割合と融雪期直前の深さ 0.05 m の地温との間には,明確な相関関係はみられなかった.土壌凍結深が増加するほど融雪水の下層への浸透が抑制されるメカニズムを概念的なモデルにより説明し,土壌凍結深が融雪水の下方浸透量を評価するための重要なパラメータの一つであることを明らかにした.