抄録
下端からの水分補給のない水分飽和したシルト層と砂質ローム層を対象に,地表面蒸発過程の土中水分移動の形態について,土中の水分量,圧力水頭,不飽和透水係数,水分容量,水分フラックス分布の変化に基づき検討した.また,恒率乾燥段階と減率乾燥段階の水分フラックス分布において,上向きの圧力勾配成分と下向きの重力成分の役割を定量的に評価した.地表面からの蒸発速度は,地表面の可能蒸発速度以上に土層内部の水分供給可能量に依存する.水分容量の小さいシルトでは,圧力低下に対する水分供給可能量が小さいため,砂質ロームに比べて地下水面が速やかに下方に移動し,水分量は全層にわたりほぼ均等に減少した.一方,飽和近傍に水分容量の大きなピーク値を持つ砂質ロームでは,地下水面上部の水分供給可能量が大きいため,地下水面の移動速度は小さく,水分量分布は地表面から地下水面まで直線的な形状を維持した.