抄録
地表面蒸発に伴う土中水分移動について,成層土の場合と地下水からの水分供給がある場合を検討した.下端を閉じて水分飽和した上層 2 cm,下層 48 cm の成層土は,上層が砂質ローム,下層がシルトの場合,急速な上層の乾燥と下層の低い水分供給能力により,単層土と比較して恒率乾燥段階が短くなり蒸発が抑制される.上層がシルト,下層が砂質ロームの場合,飽和した下層からの水分供給能力が高く,恒率乾燥段階が長くなり蒸発が促進されるが,減率乾燥段階において下層の砂質ロームの乾燥による透水係数の低下により蒸発速度が減少する.一方,地下水からの水分供給があるときは,大気の蒸発能が大きい場合,最大定常蒸発速度に収束する.最大定常蒸発速度は地下水深さに対して指数関数的に減少するが,砂質ロームはシルトに比べて減少が大きく,Gardner(1958)の定常解析の関係と良く一致した.