抄録
100 年以上前に Buckingham が発表した論文「Studies on the movement of soil moisture」を古典として読み解いた.この論文は,不飽和土壌水分のポテンシャルについて世界で初めて定義し,またその移動法則を提示した画期的なものであったが,所属していた研究機関の上司らの理解を得ることに多くの労力を費やすことになった.そこで,この論文発表をめぐる Buckingham の個人的かつ歴史的事情についても,資料に基づいて解説した.なお,論文本体において,当時の用語と現代の使用用語との間に違いがあるので,極力現代用語を用いて記述した.原著論文は非常に科学的で示唆に富み,特に理論的考察は味わい深いものであり,この分野に携わる研究者や若手研究者,大学院生にも,ぜひ読んでもらいたい.土壌物理学会事務局経由でも,原著論文のコピー(pdf)が入手可能と聞いている.