抄録
流域の窒素収支研究は,陸域で生じた純窒素投入量(NNI)の主要な輸送経路が河川であり,その割合は NNI の 25 % 程度であることを定量的に明らかにしてきた.NNI の河川窒素流出以外の行方(脱窒なのか貯留なのか)については,現在も定量的にはほとんどわかっていないが,窒素収支法,河川水質および脱窒能の空間的な把握,そして水文解析を組み合わせることで,河畔林や湿地の脱窒が河川の窒素流出におよぼす影響が少しずつ理解されてきた.人間活動による流域の窒素の動態とパターンの変化を捉えるために,様々な手法を駆使した戦略的なモニタリングを実施してデータを蓄積し,広域のモデルへ反映されることが望まれる.