土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
大津波( 2011 年)に被災した宮城県沿岸部農地土壌の概況
南條 正巳
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2015 年 129 巻 p. 5-12

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抄録

宮城県沿岸部の津波被災農地における侵食と堆積,土壌の塩類化とソーダ質化について検討した.農地の比較的大きな侵食は津波が南北に走る道路を越えて落流となった所で認められた.耕起済みの水田では作土が流された所もある一方,耕起前の水田では侵食が弱かった.津波による堆積物は多くの場合泥層と砂層に区分され,砂層は沿岸部で厚く,泥層は津波の到達域の中間部でやや厚い傾向であった.泥層はその炭素含量分布と土壌図の比較から表土が再堆積したものと推定された.津波被災 2 ヶ月後の時点で,残存土壌の少なくとも深さ 20 cm 程度まで塩類濃度が増加した.泥層には塩化ナトリウムの他にセッコウの晶出も認められた.泥層のソーダ質化は交換性イオンの当量分率で 0.4 付近に達したが,平均では 0.2 未満であった.残存土壌の水抽出過程はガポンのイオン交換式でほぼ表現されたが,泥層ではガポン定数が残存土壌より低い値となり,交換性 Ca2+ の測定にセッコウが影響したためと考えられた.

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© 2015 土壌物理学会
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