土壌の物理性
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肥料や農薬に依存した現代農業への警鐘 – 江戸時代に開発された水田の多数回中耕除草法が意味するもの –
粕渕 辰昭荒生 秀紀安田 弘法
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2019 年 141 巻 p. 65-69

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抄録

江戸時代に開発された水田の多数回中耕除草法を現在の農法のなかで再現することを試みた.具体的には,苗は露地でプール筏育苗を行い,中耕除草はチェーン除草装置付きのミニカルチを用い,中耕除草 回数は 0 ∼ 16 回まで行った.その結果,中耕除草回数が 4 回以上で慣行農法に近い収量が得られただけでなく,食味値 85 以上で 1 等級に格付けされる高品質となった.このことは多数回中耕除草法により土壌撹拌を繰り返すことで,除草と同時に土の攪拌により,物理的には均一化 · 膨軟化 · 透水性の改良,化学的には分解作用の促進,生物的には光合成微生物群による窒素固定量の増加,生態的には水田生態系の成立と病虫害の低下が考えられた.多数回中耕除草法はイネと水田の機能を生かし,省資源 · 低投入 · 環境との調和を目指す新たな水田農法の可能性を示した.

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© 2019 土壌物理学会
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