土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
北極域の永久凍土研究の現在:陸域環境変化の視点から
飯島慈裕
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 143 巻 p. 5-16

詳細
抄録
北極域は地球温暖化の影響を最も強く受けると同時に,永久凍土環境の変化が土壌や植生を介して生物・物理双方の諸過程を経るフィードバックでさらに温暖化に寄与する可能性が指摘されている.2010 年代までの観測の蓄積から,北極域の凍土の温暖化,活動層の深化傾向が顕在化するとともに,北方林の気候湿潤化による凍土– 森林共生系の変化,ツンドラ域のサーモカルスト発達と水文過程変化などの諸現象が明らかとなってきた.これまでの気候変動予測に利用されてきた陸面過程モデルには,永久凍土表層土壌の熱・水循環過程に関与する熱遮蔽効果の表現や,これらの新たな現象の連鎖は反映されておらず,気候予測にどれだけ寄与する現象となるか,さらなる観測に基づく精査に加え,これらの生物物理過程の定量的評価手法を発展させる必要がある.
著者関連情報
© 2019 土壌物理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top