抄録
土壌の音響測定法は,土壌表面で反射した音波や,土壌中へ侵入した音波を利用して,気相率や通気性を測定する方法である.しかし,土壌中での音波の伝播距離が測定対象の物理性に依存するため,音響測定範囲をあらかじめ設定することが難しい.本研究では,試料長さを変えながら,試料底面を大気に開放した状態と蓋で閉じた状態における共鳴法の結果を比較した.そして,底面の境界条件が共鳴法の結果に影響しなくなる試料長さを特定することで,土壌中の音の伝播距離を推定した.伝播距離より短くなるように試料の高さを決め,共鳴法による測定精度について検討した.充填したまさ土に対する,5 ~ 100 Hzの音波を用いた場合の伝播距離は,およそ3 ~ 7.5 cmであることが分かった.伝播距離は気相率20 %あたりで最大になった.試料高さを1.3 cmとし,試料の底面を閉じて共鳴法を用いた場合,まさ土の気相率を10 ~ 36 %の範囲で+ 0.9 %,通気係数を0.05 ~ 0.65 cm s-1の範囲で+0.05 cm s-1の精度で音響測定できることが明らかとなった.