抄録
東京電力福島第一原発事故から 10 年以上が経過したが,森林の放射性セシウムの影響は未だに続いている.森林総研による最近の研究成果から,森林に沈着した137Csの多くは鉱質土壌の表層部に存在し,この数年間落葉層や鉱質土壌表層の137Cs蓄積量にほとんど変化がないこと,幹材の137Cs濃度の増加傾向が認められなくなったことが多くの森林で示された。これらのことから,森林の137Csは大部分が鉱質土壌表層にあり,ごく一部の137Csが森林内を循環(樹木根系により吸収,落葉落枝とともに地表に還元)する状況になってきていることが明らかにされた.生産が停止した,きのこ原木林の利用再開のため,コナラ当年枝と交換性カリウム量との関係が解明された他,137Csの指標となるコナラ当年枝の採取期間について改良が進められた.野生きのこや山菜については,種間差などが判明し,それらの出荷制限の見直しにつながる可能性がある.