土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
水田土中の有機物の好気· 嫌気分解に伴う 物質の形態変化と反応移動のモデル化
田崎 小春取出 伸夫小泉 匠平徳本 家康
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2025 年 159 巻 p. 33-57

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抄録
HYDRUS1D - PHREEQC(HP1)を用いて水田土中の有機物の好気· 嫌気分解に伴う炭素窒素成分の形態変化,イオン交換,鉱物の溶解析出を含めた反応移動モデルを構築した.LEACHM に準じた有機物の一次分解モデルに対して,有機炭素の酸化と好気· 嫌気条件における電子受容体の還元反応を組み合わせ,さらに変異荷電により土のpH 緩衝作用を評価して,酸化還元電位(Eh)とpH に応じた好気 · 嫌気分解の生じるモデルに改良した.そして,有機物を施用した飽和水分定常流れの生じる水田を対象に数値実験を行った.その結果,水田土の表層1 cm 程度の表面酸化層とメタン発生まで還元の進行した還元層の土層分化を再現できた.また,各層のEh,pH に応じた各種成分の形態変化と濃度変化,イオン交換を伴う移動を評価できた.マンガン鉱物と鉄鉱物の溶解析出反応は,液相の溶液組成および固相の鉱物組成の形成に大きな影響を与える.還元層におけるFeS の高濃度の沈殿は,H2S の生成抑制効 果を持つが,Fe2+ が枯渇するとH2S 濃度は増加した.
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© 2025 土壌物理学会

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