土壌の物理性
Online ISSN : 2435-2497
Print ISSN : 0387-6012
異なる土性を持つ土壌の作付条件下における分散性及び安定性粘土の可能最大量
Rasiah Velu山本 太平
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2002 年 89 巻 p. 3-13

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抄録
粘土分散の変化に作用する物理的•機械的なストレスは特に規模が大きく集約的な農業生産系におい て大きな持続的及び環境的問題である〇しかしながら粘土の分散はストレスが減少し最小になるか除去 されたとき安定する可能性が高い〇本研究の目的は,(i)ストレス負荷の有無のそれぞれにおいて,異な る土性の土壌における分散性粘土 (DCmax)と安定性粘土(SCmax)の可能最大量を定量すること,(ii) DCmaxおよびSCmaxに影響する固有土壌変数(S)を求めることである〇粘土分散の測定は種々の作物条 件下において6種類の土性の土壌を用いて3年間の間毎月行われた。研究に用いられた作物圃場は慣行的に耕作され,連作下のコーン(CTCC)と牧草であり,1989年に設定された。そこは実験以前10年以上CTCC条件下にあった。CTCCは負荷を加えた時のシステム,牧草は負荷を減らした時のシステムをあらわす。全粘土量(TC)が6.4〜33.8%に比べて,負荷を加えたとき土壌のDCmaxは3.2〜16.6%の範囲であった。DCmaxはTCの増加,土壌の有機物(SOM)の減少に伴って大きくなった。負荷を減らしたとき土壌のSCmaxは1.2〜4.5 %の範囲でありTC, SOM, pHの増加に伴って大きくなった。DCmaxの11〜37 %は牧草の導入でストレスが減少したとき3年間安定していた。CTCCから牧草へ切り替える時期,すなわちストレスが減少させられる時期に存在するSOMの量は同程度のTCをもつ土壌中の分散粘土の安定化に大きな役割を演じた。この結果はストレス減少後の分散粘土の安定性が分散粘土含量とSOMに左右されることを示している。
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© 2002 土壌物理学会
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