抄録
カイコ卵では卵形成過程に変異が生じると、複数の核が発生し、モザイク個体や単為発生個体を生じることがある。両者の形成機構には、極体核の不活性化という共通項が想定され、その関連性があるのではないかと推測された。よって、自然発生的にモザイク個体や単為発生を高発する突然変異体を用いて、カイコの卵核成熟から受精に至る過程の機構を解明することを目的として、単為発生に関する研究を試みた。 モザイク系統およびm90系統(単為発生を高発する系統)の未交尾雌成虫の卵巣卵を人為単為発生処理したもの、および未交尾雌成虫の産下卵の着色進行状態を観察した。この時、卵内の発生の進行度をDNAの増加量でも観察するために、ゲノムに約3,500コピー存在するBMC1領域でのPCRを利用した定量法を確立した。また、m90系統が単為発生を高発する原因を調べるために、testis specific tektin遺伝子上流にm90とは異なる挿入配列を持つr06系統を利用し、m90系統とr06系統との交配系を用いて、PCRによる解析を行った。その結果、m90系統が単為発生を高発するのは、不完全な減数分裂が原因であることが示唆された。同様にモザイク系統については卵核と極体核の接合が原因であるという可能性が示された.