抄録
細胞に目的遺伝子を導入した際の確認に、レポーター遺伝子を共発現させる方法がとられることがある。哺乳類細胞では、encephalomyocarditis virus由来の非メチオニン性リボソーム導入部位を用いることにより、1種類のmRNAから2箇所のORFを翻訳可能となっており、汎用されている。しかし、このエレメントは昆虫細胞では効果が非常に弱く、実際の使用には適さない。 そこで、昆虫RNAウイルスであるPlautia stali intestine virusに存在する同様のエレメントに注目し、これを応用したバイシストロン性ベクターを構築し検討を試みた。GFP強制発現プラスミドで、GFPの終止コドンの下流に本エレメントとhygromycin耐性遺伝子を直列に挿入し、カイコ培養細胞株BmNに導入した。これをhygromycin存在下で培養すると、約50日後、高頻度でGFPを発現する細胞群が得られた。 この細胞群でGFPは、下流の遺伝子と融合せず発現していた。また、単離した3クローン中2個は、薬剤非存在下でもGFPの発現を維持していた。このことからクローン選択の際にも本ベクターは有効であると考えられる。 現在、選択マーカーを別薬剤に改変したベクターを構築しており、その結果についても報告したい。