日本蚕糸学会 学術講演会 講演要旨集
日本蚕糸学会第72回学術講演会
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カイコ培養細胞における相同組換え修復測定系の確立とその解析
門 宏明日下部 宜宏青木 智佐李 在萬河口 豊古賀 克己
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p. 48

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抄録

遺伝子相同組換えは、普遍的生命現象であり、DNA損傷の修復や減数分裂期の相同染色体分配においても重要な働きをしている。また、それに働くタンパク質は細菌からヒトまで機能、構造ともよく保存されている。細胞は、電離放射線·紫外線·化学物質などによる外的要因や生命活動の維持に必要な細胞内代謝に伴って発生する突然変異原、活性酸素などの内在的要因によって、DNAが恒常的に損傷を受けている。しかし、生物はゲノムを安定に保持するための多様なDNA修復機構を備えている。損傷の中でもDNA二重鎖切断(DSB)は本来、染色体欠失をもたらす致命的な損傷であるが、真核生物ではHRや非相同組換え(NHEJ)によって修復が行われている。酵母のようなゲノムサイズの小さな単細胞生物ではHR、ヒトなどのゲノムサイズの大きな多細胞生物ではNHEJが多用されているが、昆虫細胞では、どちらの系が多用されているか不明であり、また、2つの系の相互関係も明らかではない。本研究では、昆虫細胞におけるHR分子機構の解明を目的として、その測定系の確立とその解析を試みた。まず、細胞内でHRが起きた場合にのみルシフェラーゼ活性が現れるプラスミドを構築した。そのプラスミドに制限酵素で二重鎖切断を導入すると、二重鎖切断を導入しない場合と比較して、約4倍のHR活性が見られた。さらに、二重鎖切断の末端の片方にHairpin状のリンカーを付加し、Single strand annealing(SSA)とNHEJの経路を阻害する基質を作製した。その結果、染色体外の二重鎖切断修復にはSSAの経路が多用されているが、HRの経路でも修復が行われていた。現在、RNAi法を用いたHR酵素Rad51やNHEJ酵素Ku70の発現抑制、また、プラスミド分子間のHR活性をみるプラスミドも作成しHR活性の解析を行っている。

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© 2002 社団法人 日本蚕糸学会
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