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Print ISSN : 0289-6540
Formal LISP におけるトレースの標準形とその応用
後藤 滋樹
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1990 年 7 巻 2 号 p. 2_130-2_143

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抄録

本論文の目的は二つある.まずFormal LISPという新しい表現形式でプログラムの実行結果のトレースを表すことを提案する.ここにFormalとは形式的あるいは論理的(logical)という意味である.この名前が示すようにFormal LISPで表現されたトレースは論理式の証明図のように読むことが出来る. 最も重要な点は,この新しいトレースの性質を応用して,二つのプログラムの同値性の証明が可能になることである.この証明は論理式の証明図におけるnormalization定理を準用して行う.またnormalなトレースは,論理式の証明図の場合と同様に,分解,基本操作,合成の三つのパートに分かれる.これはトレースが一種の標準形を持つことを意味する. 二番目の目的は,数学的帰納法を陰に利用したプログラムの拡張法を示すことである.この方法では,小さなプログラムに対する二つのトレースをずらして重ね合わせることにより,一回り大きなプログラムに対するトレースを得る.この拡張法は対象となるプログラムが一様である(uniform)という性質を満たす場合に利用可能である.一様なプログラムのクラスの中には,BoyerとMooreが示したような数学的帰納法を使うプログラムの例題が含まれている.

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© 1990, 日本ソフトウェア科学会
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