2023 年 63 巻 4 号 p. 62-71
身寄りのない認知症高齢者の医療同意をめぐり,第三者後見人が医療・介護従事者との合意形成に苦慮した事例を分析し,法的権限を有する後見人の課題を検討した.事例では,本人が「口を開けない」状況に対して,後見人と医療従事者では捉え方が異なったために医療の選択で支障となった.また,本人が署名した「延命治療の確認書」の意向が汲まれず,疎遠である親族に医療同意の協力を求めるとなった.本事例での後見人の課題は,医療・介護従事者との間に医学的情報での格差がみられたこと,表明された本人の意向について協議の機会がなかったこと,医療の選択では親族の意向が優先されてしまったことである.したがって後見人は,本人の延命に対する意向を医療・介護従事者に説明する努力を最大限に行うこと,そして本人にとっての最善の医療のために,公平性が担保されたなかで医療・介護従事者との合意形成に務めることが重要であると考えられる.