生活保護受給状況による高齢者の幸福感の相違を検討した.日本老年学的評価研究(JAGES)が2013年と2016年に実施した65歳以上高齢者を対象にした自記式の郵送調査データ(それぞれn=137,736,n=194,352)を使用した.サンプル全体を「生活保護受給」「非受給・貧困」「非受給・一般」の3群に分け,幸福感に関連する交絡要因として日常生活自立(治療疾患の有無と高次生活機能)および社会生活自立(知人と会う頻度,近隣との交流等)の状況を用いた.調査時点による差は確認されなかったが,両時点ともに生活保護受給群の幸福感はほかより有意に低かった.性別・年齢等にかかわらず,生活保護受給群の高幸福群への該当しやすさは非受給・一般群の約0.68倍であった.加えて,日常生活自立と社会生活自立の状況を調整すると約0.73倍に縮小し,自立支援によって生活保護受給群の低幸福の一部を緩衝しうることが示唆された.
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