2010 年 1 巻 3 号 p. 119-124
眼瞼皮膚や眼窩骨に欠損がない外傷後無眼球症の二次的義眼床変形に対するfree flapの適応について検討する。2008年までの10年間に経験した症例を対象とした。外傷後無眼球症の二次的義眼床変形に対する手術症例のうち,眼瞼皮膚や眼窩骨に欠損がない症例について遡及的検索を行い,free flap移植術を適用した症例の治療経過を詳細に調査した。全7例のうち,3例でfree flap移植術が施行されていた。Free flapを移植したのは,受傷後長期間経過してから重度の義眼嚢拘縮をきたしたものが2例,上眼瞼皮下の著明な瘢痕拘縮と陥凹変形をきたしたものが1例であった。眼瞼皮膚や眼窩骨に欠損がない外傷後無眼球症においても,free flapを必要とする症例が一定数存在する。重度かつ進行性の義眼嚢拘縮,眼瞼の著明な瘢痕拘縮を伴う高度な陥凹変形はfree flapの適応基準となることが示唆される。