創傷
Online ISSN : 1884-880X
ISSN-L : 1884-880X
1 巻, 3 号
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総説
  • 水野 博司, 林 礼人, 宮本 英子, 古元 将和, 宮本 正章, 百束 比古
    2010 年 1 巻 3 号 p. 107-111
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
     重症虚血肢に発生する難治性創傷は,通常の植皮術や皮弁移植術のみでは対応困難なことが多い。われわれは,現行の治療法では治療不能とされてきた最重症例に対し,種々の再生治療を応用した創傷治療を実施し良好な結果を得てきたので自験例を紹介しつつ,難治性創傷治療に果たす形成外科の今後の役割について述べる。現行の治療手段では救肢困難な虚血性下肢難治性潰瘍患者を対象に,自家骨髄細胞ないしは徐放型塩基性線維芽細胞増殖因子を用いて血管再生治療および創傷再生治療を実施した。創傷の閉鎖は自然な創収縮や上皮化を期待するか,追加植皮を行った。その結果,多くの症例で創閉鎖および自立歩行による退院を達成した。われわれの経験した治療手法は救肢率の向上に寄与していることが分かったが,これらを達成するためには他科との連携した集学的治療を実践するとともに,形成外科医も手術のみならず種々の治療手段を動員することが今後重要になると思われた。
  • 赤石 諭史, 小川 令, 百束 比古
    2010 年 1 巻 3 号 p. 112-118
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
     シリコーンジェルシートは,肥厚性瘢痕やケロイドに対して世界中で広く使われている。しかし,作用機序や適切な使用方法に関していまだ不明な点が多いため,本論文ではシリコーンジェルシートの既存の文献を網羅し,臨床応用や作用機序に関して考察した。
     その結果,作用機序として外部からの刺激の保護や瘢痕周囲にかかる皮膚張力の分散などが示唆され,また,材質はシリコーンに限らず,ほかのものでもよい可能性が示された。かつ理想的なジェルシートとは,(1)表面の保湿を行いつつ適度に水分をシートより蒸散するもの,(2)皮膚に対して接触性皮膚炎を起こさず接着し,外部の刺激からクッションの役割を果たす軟らかさをもったもの,(3)正常皮膚と比較して同様の厚さ・硬さ,厚く軟らかい,もしくは薄く硬いものである可能性が示唆された。
原著
  • -眼瞼皮膚,眼窩骨に欠損がない症例の検討-
    橋川 和信, 櫻井 沙由理, 高須 啓之, 寺師 浩人, 田原 真也
    2010 年 1 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
     眼瞼皮膚や眼窩骨に欠損がない外傷後無眼球症の二次的義眼床変形に対するfree flapの適応について検討する。2008年までの10年間に経験した症例を対象とした。外傷後無眼球症の二次的義眼床変形に対する手術症例のうち,眼瞼皮膚や眼窩骨に欠損がない症例について遡及的検索を行い,free flap移植術を適用した症例の治療経過を詳細に調査した。全7例のうち,3例でfree flap移植術が施行されていた。Free flapを移植したのは,受傷後長期間経過してから重度の義眼嚢拘縮をきたしたものが2例,上眼瞼皮下の著明な瘢痕拘縮と陥凹変形をきたしたものが1例であった。眼瞼皮膚や眼窩骨に欠損がない外傷後無眼球症においても,free flapを必要とする症例が一定数存在する。重度かつ進行性の義眼嚢拘縮,眼瞼の著明な瘢痕拘縮を伴う高度な陥凹変形はfree flapの適応基準となることが示唆される。
  • 小野 真平, 林 宏光, 小川 令, 百束 比古
    2010 年 1 巻 3 号 p. 125-132
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
     “プロペラ皮弁法”の術前評価法としてのMDCTによる穿通枝造影検査 (perforator CT angiography;以下P-CTA) の有用性を報告する。術前にMDCTによるP-CTAを施行し,かつプロペラ皮弁で再建を行った症例を対象に後ろ向き調査を行った。対象は11例,13皮弁で,皮弁茎は5皮弁が皮下茎,8皮弁が穿通枝茎であり,皮島の形状は通常の楕円形が9皮弁,2葉が3皮弁,4葉が1皮弁であった。皮弁の大きさは最小が6.5×2cm,最大が27×8cmであり,ドナーは植皮をした2例を除いて単純縫縮が可能であった。生着率は1例に部分壊死を認めたが,残り10例は100%生着した。MDCTで同定した穿通枝は,疑陽性,偽陰性は認めなかった。さらにMDCTによるP-CTAを導入することで,平均約21%の時間短縮となった。MDCTによるP-CTAは“プロペラ皮弁法”の安全性を高め,手術時間を短縮することが示唆された。
  • -ASHEプロジェクト221例に関する臨床研究-
    峯岸 季清, 上村 哲司, 増本 和之, 佐竹 義泰
    2010 年 1 巻 3 号 p. 133-137
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
     日本には足を臓器として専門に扱う診療科,医師は存在しないため,その治療を進めるためには,その専門の医師でなくても治療の流れを理解でき,診療を進めるための指針が必要である。われわれは,地域の足病変患者の下肢救済と治癒を戦略的に進めるための地域連携を行っている。佐賀大学医学部附属病院および関連病院を受診した糖尿病足病変患者は,共通の治療アルゴリズムを使って治療が進んでいる。2006年1月から2008年12月まで過去3年間に治療を行った糖尿病足病変患者221人を対象に検討を行った。全症例における治癒・改善率は61%であり,血管治療を施行した症例内での治癒率は89%であった。糖尿病足病変に対し,共通の治療アルゴリズムを使うことで,治療の標準化が進められた。
症例報告
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