抄録
骨露出のある指尖部損傷に対し,露出骨を切除せず局所陰圧閉鎖療法(以下 NPWT )を併用する方法で,NPWT を併用しない場合と比較して治療期間が短縮するか,また治療後の結果が機能面・整容面で満足できるものであるかを検討した。全 8 症例に対し,平均 17.9 日間 NPWT を行い,その後の軟膏療法(平均 35.9 日)により合計 53.8 日で創閉鎖が得られ,従来法よりも治療期間を短縮することができた。NPWT 中も ROM 訓練を継続でき,可動域制限を最小限に留めることができた。受傷後 6ヵ月の指尖部の S-2PD は 3.8mm,M-2PD は 2.6mm と正常知覚を獲得しており,皮弁法と比較して良好であった。整容面では,指の長さを温存でき,爪甲の再生も促され,指尖部はふっくらとなめらかな形を獲得することができた。本法はドナーを必要とせず,健常指への侵襲もなく,治療者側の特殊技能を必要としないことも大きな利点である。