2023 年 58 巻 Supplement 号 p. s309_3
【目的】腹部異所性心移植を用いた異種移植として、小動物間ではハムスター-ラット、モルモット-ラット、マウス-ラットがこれまでに報告されている。同じ齧歯類だが、グラフトの生存期間や生じる拒絶反応の機序はそれぞれ異なることが知られている。一方、ウサギ-ラットにおける心臓異種移植の報告例はなく、生じる免疫応答の研究を行った。【方法】ドナーにウサギ(日齢7~14、100~200g)、レシピエントに正常ラットと免疫不全ラット(200~300g)の2種類を用いて、腹部異所性心移植を行った。グラフト生存期間と組織学的評価を行った。【結果】ウサギ-正常ラット(A群)3例と、ウサギ-免疫不全ラット(B群)4例の異種移植モデルを作成した。A群では術翌日まではグラフトの拍動を認めたが、術後3日目の時点で全例でグラフトの拍動は消失していたには。摘出したドナー心のHE染色では、心筋への炎症細胞浸潤と冠動脈血栓閉塞を認め、急性拒絶反応が疑われた。B群でも術直後はグラフトの拍動は良好であったが、術後7日目までに全例で拍動は消失し、組織学的にはA群同様、心筋への炎症細胞浸潤と冠動脈血栓閉塞を認めた。【考察】ウサギ-ラット間での心臓異種移植は、超急性拒絶反応は認めなかったが術後3日目までに急性拒絶反応を認めた。レシピエントに免疫不全ラットを用いても拒絶反応を回避できず、T細胞非依存性免疫応答が重要な役割を果たしていることが示唆された。