抄録
水牛の環境適応性の機序を解明する一手段として, 筑波大学農林技術センターにおいて, 季節的環境温度が水牛の血液成分・性状にいかなる影響を及ぼすかを, 牛と比較試験した.その結果によると, 水牛の血漿中グルコース, 総蛋白質, ヘマトクリット値, 血漿アルカリ性ホスファターゼ活性および赤血球数の年間平均値はホルスタインより高かった.季節的気温の増加によって, 水牛とホルスタインのカルシウムは有意に増加したが, グルコースとアルカリ性ホスファターゼ活性は減少した.水牛ではヘマトクリット値と赤血球数も減少した.体温の上昇は, ホルスタインではカルシウムの増加とアルカリ性ホスファターゼ活性の減少を, また水牛ではヘマトクリット値と赤血球数の減少をもたらした.以上の結果は水牛はホルスタイン牛に比べて, 生理的には高温度環境に適応しにくいことを示唆しているように思われる.