2025 年 11 巻 1 号 p. 11-17
本研究は,観測時期が必ずしも連続で一様ではない任意の観測から得られる観測データを利用して,道路施設の生存関数をノンパラメトリックに推定する手法を提案するものである.これまで我々は,LBS(Length-biased Sampling)の立場で推定手法を提案してきたが,施設の生存を確認する観測機会が生存期間に対して連続して一様分布するという仮定が必要であった.本研究は,この仮定を必要としないより一般的な観測機会にも適用できる方法を提案するものである.ただし,生存開始時期が不明の左打切りデータは対象外としている.その結果,生存関数を推定する尤度関数は,観測機会に依存しないことを明らかにするとともに,生存期間の長さを考慮した LBS に基づく推定法と,長さを考慮しない NS(Natural Sampling)に基づく推定手法の類似性を明らかにした.実データを用いた検証を行い,提案手法の推定精度の確認を行うとともに,実務への適用性について考察を加えた.