抄録
既存の経路選択モデルは,ドライバーが直接的な経験を通じてネットワークに対する空間的知識を獲得していることを前提とし,大域的な経路の評価・選択をモデル化する.しかし災害時のネットワークにおいては,ドライバーは経験や情報を持たず,先読みを伴う近視眼的な判断が重要となる.こうした意思決 定の動学性を記述するため,空間割引率の概念を導入した一般化 RL(Recursive Logit) モデルを提案し た.数値計算では,空間割引率が経路選択行動の評価に与える影響だけでなく,本モデルが特殊ケースとして既存モデルの結果を含むことを示した.さらに,東日本大震災時の首都圏のデータを用いたパラメータ推定を行い,日常時のデータと比較した.結果として,災害時には近視眼的な意思決定が重視され,また経路選択メカニズムが動的に変化したことを明らかにした.