2019 年 5 巻 2 号 p. A_293-A_302
四国の高速道路ネットワークは,ミッシングリンクや暫定二車線区間も多いため,早期の整備が望まれるが,現状の事業評価では十分な便益が計量されない状況にある.一方,現行の事業評価は自動車交通需要のみを扱った需要固定型の交通量配分に基づいているため,交通手段の転換や目的地の変化,新たな誘発需要などが評価できず,また,三便益(時間短縮,走行費用削減,事故減少)のみを対象としており,時間信頼性の向上等の効果が考慮されていない,等の問題がある.そこで本研究では,都市間での旅客流動がトリップベースで把握可能なデータを用いて,誘発・転移,転換交通を考慮した統合型需要モデルを構築すると共に,同モデルを用いて高速道路整備に伴う交通需要の変化の分析や利用者便益の計測を行い,現行の事業評価の問題を定量的に検討した.