抄録
末梢性後下小脳動脈瘤(distal PICA aneurysm)は比較的稀な動脈瘤である.今回われわれはdistal PICA aneurysmの中でもクモ膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)で発症した二重起始後下小脳動脈吻合部動脈瘤(Aneurysm on double origin of the PICA;double PICA aneurysm)に対して血管内治療を施行した1例を経験した.
症例は44歳男性で糖尿病教育入院中にSAHを認め,当科緊急転科となった.CTではfisher group3のSAH及び第四脳室内にも血腫を認めた.右椎骨動脈撮影にて頭蓋外椎骨動脈より分枝するPICA(extracranial lower branch)と頭蓋内椎骨動脈より分枝するPICA(upper branch)の合流部に動脈瘤を認めた他,右椎骨動脈自体も高度に狭窄,蛇行していた.左椎骨動脈は鎖骨下動脈起始部より閉塞していた.急性期治療を避け,脳血管攣縮期を乗り切り,治療する方針としコイル塞栓術を施行した.術後,動脈瘤陰影は消失し,PICA遠位部も良好に描出されていた.
二重起始後下小脳動脈吻合部動脈瘤(Aneurysm on double origin of the PICA;double PICA aneurysm)に対して,文献的考察を加えて報告する.