脳卒中
Online ISSN : 1883-1923
Print ISSN : 0912-0726
ISSN-L : 0912-0726
症例報告
脳梗塞と鑑別困難であったfocal inhibitory seizureの1例
中嶋 匡西村 裕之西原 賢太郎浮田 透辻 雅夫三宅 裕治大村 武久立花 久大
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 30 巻 4 号 p. 577-582

詳細
抄録

症例は68歳女性.2006年11月21日右手の動かしにくさを自覚し,以後徐々に症状増悪した.11月23日には構音障害と運動性失語が出現した.11月24日右上肢のけいれん後右片麻痺が出現し当院へ入院した.入院時,意識障害,全失語,軽度右片麻痺を認めた.入院当日の頭部MRIは,拡散強調画像およびFLAIR画像で左前頭葉皮質にリボン状に高信号を認めた.緩徐進行性の経過から,seizureを伴った血栓性脳梗塞と診断し,抗てんかん薬投与と抗血小板療法を行った.入院後物品呼称や名前を言うことが可能となり,右下肢麻痺は消失した.右上肢麻痺も徐々に改善し,失語症と共に26日には消失した.以上より本例をfocal inhibitory seizureと診断した.本症は従来考えられていたよりも稀な病態でなく,抗てんかん薬で治療可能であることから,脳梗塞との鑑別上留意すべき病態であると考えられた.

著者関連情報
© 2008 日本脳卒中学会
前の記事 次の記事
feedback
Top