脳卒中
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原著
救急初療室で急性期脳梗塞を合併する急性大動脈解離を鑑別する
岩下 具美今村 浩望月 勝徳北村 真友菊池 忠岡元 和文
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2008 年 30 巻 6 号 p. 852-856

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抄録

【目的】大動脈解離(AAD)を合併する脳梗塞(CI)患者にrt-PAが投与され死亡例が報告された.AAD初発症状が意識障害や片麻痺もあり,脳卒中医にはAAD鑑別が求められる.本研究は,救急室で施行される簡易で低侵襲な検査法から,AAD鑑別因子を求め,より安全・迅速にrt-PAが投与されることにある.【方法】対象は,当施設へ救急搬送されたCI(A群)107例とAAD50例.AADのうち胸背腹部痛を初発症状としない非典型例(13例)をB群とした.初療時のカルテより血圧と既往歴,臥位胸部X線から心・胸隔比,上縦隔・胸隔比を抽出した.【結果】B群は全AADの26%を占めた.B群の初発症状は,意識障害7例(54%)・運動麻痺4例(31%)であった.年齢・性別・既往歴と心・胸隔比は,群間に差がなかった.収縮期血圧(mmHg)はA群155・B群106,上縦隔・胸隔比(%)はA群29・B群38で,ともに有意差を認めた.【結論】非典型AADとCIとの鑑別には,初診時の血圧と胸部X線の2因子が挙げられた.急性期脳梗塞のrt-PA適応例には,投与前に必ずこの2因子を検査し,血圧低値や縦隔拡大を認めた時は,胸部造影CTで精査した後,投薬可否を決定すべきである.

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© 2008 日本脳卒中学会
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