抄録
硬膜静脈洞血栓症は,昨今の診断技術の進歩に伴い早期の診断と治療が可能になったが,治療のタイミングを逃せば致死的になりうる疾患であり,軽症例は見逃されている可能性がある.我々は初診時の臨床症状が軽微で,CT, MRIにて脳実質に異常所見がなく,初期診断に苦慮した硬膜静脈洞血栓症の4例を経験した.症例は20歳から72歳,男性2例,女性2例で,鬱血乳頭が1例に見られた以外,初診時の神経所見は問題なかった.3例は頭痛にて発症し,このうち2例は突然の痛みであった.1例は下肢の脱力にて発症した.確定診断は脳血管撮影で行ったが,T1強調画像にて静脈洞内の信号変化を認め診断に有用であった.静脈洞の閉塞部位は上矢状静脈洞,横静脈洞,S状静脈洞であった.抗凝固療法にて経過良好であったが,早期の診断と治療開始が大切であり,常に念頭におくべき疾患である.