抄録
症例は42歳女性.子宮頸癌(T2bN1MA,stage IVb)治療中に右上下肢脱力をきたした.第1病日の拡散強調MRIで両側大脳半球に新鮮梗塞が散在していたが経食道心エコーを含め明らかな塞栓源はなく,クロピドグレル服用下に第11病日自宅退院した.しかし第12病日右上下肢脱力が増悪し第13病日再入院した.再入院時の拡散強調MRIで新規梗塞巣がみられ,第14病日の経胸壁心エコーで僧帽弁後尖に疣贅を認め(第35病日には消失),非細菌性血栓性心内膜炎と診断した.子宮癌では腺癌主体の体癌に伴う非細菌性血栓性心内膜炎の報告は多いが,扁平上皮癌主体の頸癌に伴うものは極めてまれである.非細菌性血栓性心内膜炎の生前診断は報告が少なく,理由として疣贅が経食道心エコーでも証明困難な微小径であることが挙げられるが,原因不明の脳塞栓症では繰り返し経胸壁・経食道心エコーを行い疣贅の検出に努めるべきである.