抄録
症例は80歳の男性で,意識障害にて当院に救急搬送となった.来院時に心房細動あり,突然の意識障害,右動眼神経麻痺,中脳右側と小脳左側に新鮮梗塞巣を認め脳底動脈閉塞症と診断した.入院後抗凝固療法と抗不整脈薬を開始し,以後洞調律で経過した.第31病日,突然の腹痛に続いてショック状態となり症状出現から8時間で死亡した.剖検の結果,上腸間膜動脈の閉塞と腸管壊死を認め,心内血栓はなく大動脈弓部に壁在血栓を伴う潰瘍があり,同部位を塞栓源とする急性上腸間膜動脈閉塞症と診断した.脳塞栓症急性期に腹痛に伴うショック状態を呈した場合,急性上腸間膜動脈閉塞症を疑うと共に塞栓源として大動脈複合粥腫病変を考慮する必要がある.