2010 年 32 巻 1 号 p. 74-79
症例は80歳,男性.副鼻腔炎にて加療歴あり.2007年1月より意欲低下・頭痛・易疲労性あり.4月より呂律不全・歩行時のふらつき・見当識障害が徐々に進行.4月14日右片麻痺を発症し,左内包後脚のラクナ梗塞にて入院.入院時水頭症の併存を指摘.入院後,発熱・意識レベルの低下を繰り返し,精査にて髄膜脳炎・血管炎に伴う水頭症・脳梗塞・SIADHと考えられた.その後,再梗塞を来し最終的にくも膜下出血にて5月12日永眠された.剖検所見にてアスペルギルスによる髄膜炎・血管炎に伴う脳梗塞・くも膜下出血と診断された.アスペルギルス髄膜脳炎は稀にしか見られず,病理所見を得られた症例は数少ない.本例のように基礎疾患が明らかでなく,脳梗塞発症後に急速な経過をとる症例は臨床的にも稀であり,ここに症例報告する.