2010 年 32 巻 1 号 p. 68-73
症例は63歳男性.視野障害,痙攣発作にて発症しdural arteriovenous fistula(以下,DAVF)と診断され,当院へ紹介となった.脳血管撮影で血流は主に右中硬膜動脈,後頭動脈から,isolateされた右横静脈洞・S状静脈洞移行部に流入し,直静脈洞,ガレン静脈洞へ流出していた.まず,経静脈的塞栓術を試みたが到達できず断念した.その2日後に構音障害が出現,頭部CTでは右小脳半球に広範囲の低吸収域を認めた.脳血管撮影では,シャント血流の増大,静脈還流遅延を認めた.シャント血量を減らすため中硬膜動脈から塞栓を行うことにした.マイクロカテーテルをシャント近傍まで進めると,静脈洞への流入孔が確認でき,マイクロカテーテルを静脈洞内まで進めることができた.その部位で,コイルによる静脈洞塞栓を行った.術後小脳症状は改善した.画像上低吸収域は消失し,静脈還流障害による浮腫性変化であったと考えられた.術後神経脱落症状なく退院し,3カ月後の脳血管撮影でもシャントは閉塞しており,術後2年を経過して再発は認めていない.