脳卒中
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短報
舌右側の味覚低下で発症し,電気味覚検査で味覚改善の経過を追跡し得た左視床梗塞の1例
長山 成美権藤 雄一郎垣内 無一中西 恵美松井 真
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2011 年 33 巻 3 号 p. 370-373

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抄録

脳血管障害にともなう味覚低下の報告は比較的稀である.今回われわれは舌右側の味覚低下で発症した左視床梗塞の症例を経験した.症例は58歳,男性.昼食中に口腔内右半分の味覚低下が出現.続いて右口唇部・右母指と示指のしびれ感が出現,改善しないため入院した.頭部MRI拡散強調画像で左視床に急性期梗塞像を認めた.電気味覚検査で,急性期の第11病日には右鼓索神経領域の刺激閾値の著明な上昇を認めたが,第53病日には改善を認めた.味覚の中枢伝達路は同側延髄孤束核から橋味覚野へ伝達された後,交叉して対側視床へ投射,頭頂葉弁蓋部に存在する味覚野に至る.この経路に脳血管障害が起こると味覚障害をきたすが,舌咽神経や鼓索神経などの障害と比較して障害が軽く,詳細な解析の報告はない.今後の症例蓄積が必要である.

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© 2011 日本脳卒中学会
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