抄録
左前大脳動脈解離発症5年後に対側の右前大脳動脈解離を来した1例を経験した.症例は43歳男性,38歳時に頭痛と右不全片麻痺にて発症し,頭部MRIで左前大脳動脈領域に脳梗塞がみられた.MR angiography(MRA)にて左前大脳動脈のA2閉塞および壁内血腫を認めたことから,左前大脳動脈解離と考えられた.神経学的後遺症を残さず退院したが,左前大脳動脈解離発症5年後に,突然発症の頭痛が出現した.頭部CTにて右前頭葉に出血性梗塞を認め,MRAでは左前大脳動脈の狭小化および右前大脳動脈のA2から脳梁辺縁動脈近位部の閉塞を認めた.MRI T1強調画像およびT1強調black blood imageにおいて同部位に壁内血腫が確認され,右前大脳動脈解離と診断した.5年もの長期経過を経て両側前大脳動脈解離を来した症例は,検索した限りでは報告がない.脳動脈解離において慢性期の再発は稀とされるが,既往歴のある症例において頭痛や神経症状の再発があった場合,脳動脈解離の再発も考慮されるべきである.