抄録
要旨:症例は43 歳男性.高血圧,糖尿病の治療のため某内科に入院した.降圧治療により血圧は224/126 mmHg から109/80 mmHg に低下し,それとともに両側耳鳴・口唇の異常感覚・不明瞭言語・四肢失調が出現した.MR では両側中小脳脚と橋上部正中領域に新鮮梗塞を認め,また両側椎骨動脈は閉塞し脳底動脈は内頸動脈系から逆行性に灌流されていた.本例は両側椎骨動脈閉塞の存在下に過剰降圧が契機となって血行力学性に脳梗塞を発症したと判断した.中小脳脚は上小脳動脈と前下小脳動脈の,橋上部正中領域は上橋底枝と上橋被蓋枝の分水嶺に相当するといわれており,椎骨脳底動脈系において血行力学不全を生じやすい部位と考えられた.