脳卒中
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症例報告
下部尿路機能障害で発症した,病変分布が特徴的な延髄梗塞
田中 寛大設楽 智史和田 一孝島 淳奥宮 太郎末長 敏彦
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2014 年 36 巻 6 号 p. 438-442

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抄録

要旨:61 歳男性.入院前日,首をひねった時,左頸部に電撃痛が走り,尿が出なくなった.頭部MRI で延髄左側に,下オリーブ核から後方に広がる急性期梗塞を認め,脳血管撮影では右前下小脳動脈-後下小脳動脈(PICA)共通幹と左V2–V3 移行部から,左PICA 領域に向かう血流を認めた.入院4 日目の膀胱内圧測定では,尿意は正常で排尿時膀胱内圧も高かった一方で自排尿が不可能であった.入院9 日目に自排尿が可能になり,残尿も認めなかった.入院13 日目に退院し,下部尿路症状の再発はない.延髄梗塞による下部尿路機能障害(LUTD)は稀であるが,延髄での橋排尿中枢(PMC)下行路は下オリーブ核後方を通過すると考えられており,本例ではPMC 下行路の障害で,LUTD を生じた可能性がある.また,本例ではLUTD を主体として延髄梗塞を発症したが,PICA 支配領域の多くが保たれており,これまでの報告と比べて病変分布が特徴的であった.

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© 2014 日本脳卒中学会
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