2016 年 38 巻 3 号 p. 168-172
症例は56 歳の男性.2 年前に行われた頸椎前方固定術の際に留置されたプレート抜去のため,全身麻酔による手術を受けた.手術終了直後より血圧の低下あり,麻酔からの覚醒も不良であった.不穏症状出現したため当院に転院となった.症状は無動性無言,軽度の右麻痺であった.MRI では拡散強調像にて尾状核頭部から基底核にかけての梗塞認め,MRA では左ICA 起始部の壁不整,ACA のA1 部分の閉塞を認めた.続いて施行されたCTA にて左ICA 起始部からICA,ECAにかけての解離を指摘された.手術手技に伴うICA 解離と診断し,同血管病変に基づく塞栓性機序による脳梗塞と考え,抗血小板剤内服による治療を開始した.その後症状の増悪なく,独歩退院となった.頸椎前方に対する手術において血管性合併症を来す可能性は非常に低い.本症例のように比較的短時間の手術でも動脈解離性の合併症を発症することがあり,注意が必要である.