脳卒中
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症例報告
急速な貧血によって生じた両側多発性脳梗塞の1 例
藤井 悠里藤本 茂田川 直樹大﨑 正登金沢 信大屋 祐一郎
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2016 年 38 巻 5 号 p. 331-335

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抄録

症例は高血圧症・脂質異常症の既往があり,ADL が自立した80 歳女性.意識障害を主訴に救急搬送された.入院時には右顔面麻痺,構音障害,軽度の右上肢脱力があり,正球性正色素性貧血と両側境界域や皮質に多発する急性期脳梗塞巣を認めた.神経症候は輸血により改善傾向を呈した.来院1 週間前より食欲不振と黒色便があり,上部消化管内視鏡検査にてA1 stage 潰瘍を認めた.すでに止血が完成していたため,抗血栓療法を開始した.頭蓋内および頭蓋外脳血管に有意狭窄はなかったが,虚血病巣や輸血により症状が改善したことから,脳梗塞の発症機序として急激な出血による循環血液量の減少と貧血による低酸素血症が示唆された.さらに悪性腫瘍などは認めなかったが,経食道心エコー検査で大動脈弓部に高度粥腫を認め,大動脈原性塞栓症の可能性も疑われた.二次予防にはクロピドグレルを選択し,再発や神経症候の増悪はなく,独歩で自宅退院となった.

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© 2016 日本脳卒中学会
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