2016 年 38 巻 6 号 p. 429-433
要旨:成体大脳の側脳室周囲組織,いわゆる脳室下層と海馬歯状回には,自己複製能と多分化能を保持した神経幹細胞が生涯にわたって存在し,新たな神経細胞を産生し続けることが,ヒトを含めた様々な哺乳動物種において確認されている.内在性神経幹細胞による神経新生は,脳損傷により亢進すること,そして損傷部位の再生に寄与することが明らかとなっている.そして本来活発な神経新生がみられない部位にも内在性神経幹細胞が存在し,脳損傷により活性化され再生に寄与することも明らかとなった.これら内在性神経幹細胞による再性能を高めるための有望な手段の一つとして,脳室内への増殖因子投与があげられる.今回,我々が行ってきた,成長因子脳室内投与による成体内在性神経幹細胞の動員の研究の結果を報告する.